教育改革2020

どうする・どうなる!?2020年。保護者視点で分析する教育改革。調べてわかったことを中心にまとめています。

《英語改革基礎知識③》異なる民間資格・検定試験の結果をどのようにして比べるのか

 

 これまで、英語改革の全体スケジュールを俯瞰したうえで、基礎知識①として民間資格・検定試験の種類とその特徴を、基礎知識②として「実施回数」「費用」「会場」の3点で比較したときに見えてきた民間資格・検定試験活用の公平性についてまとめてきました。

 

 基礎知識③となる今回は、目的も測り方も異なるそれぞれの民間資格・検定試験の結果を、入学者選抜のような共通の土俵でどのようにして比較するのか、そして、その際の課題についてまとめたいと思います。

 

 

 

▪ 目次

 

 

CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)とは?

 結論から先にお伝えすると、異なる民間資格・検定試験を相互に比較するために、「CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠 / Common European Framework of Reference for Languages)という参照枠を利用します。

 CEFRは、言語の枠や国境を越えて、外国語の学習・教授・評価のコミュニケーション能力を表す「ものさし」で、欧米を中心に広く使われている国際標準規格です。

 外国語の熟達度を A1、A2 、B1、B2、C1、C2 の 6 等級に分けて評価します。それぞれの等級は、その言語を使って「具体的に何ができるか」という表現で示しています。

 

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 そして、上記のCEFRに対して、それぞれの民間資格・検定試験の結果をあてはめたものが以下の表となります。

 

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 2017年度版の対照表です。2017年度版。そう、実はこの対照表、年度によって微妙に対応関係が違うのです。これがまずひとつめの問題点です。

 

自分がどのレベルかわからない

 仮に、前年度の対照表をもとに自分の目標を設定し、民間資格・検定試験に臨み、目標を上回る結果を得たとします。もしここで、あなたが受験生だったらどのような心理が働くでしょう。英語の学習についてはおおむね達成されたとみなし、他の科目の学習に重心をシフトさせようとしませんか?

 しかし、ふたを開けてみると、自分の受けた民間資格・検定試験とCEFRの対応関係に変化があった。それによって、もう一度、より高得点を目指すよう軌道修正を強いられるとしたら。やりきれないですよね。

 上記2017年度版の対照表は、更新日が「2017年7月10日」となっています。受験生が民間資格・検定試験の結果を大学側に提出できるのは、高校3年時の4月~12月に受検した2回までの結果というルールになっていることは、かねてからお伝えしてきたとおりです。

 つまり、7月よりも前に受けた民間資格・検定試験の結果が、前年度対照表ベースでは目標をクリアしているものの、7月に更新された当年度の対照表では及んでおらず、7月以降にリベンジを求められる、という想定は十分にありえます。ただでさえ神経質になりがちな受験生のメンタルにとって、こうした曖昧で不安定な対応関係は良い影響をもたらすとは思えません。

(もっとも、まだ詳細な運用方針が出ていないので、今後の調整いかんによってはこの問題は解消されます)

 

個々人の能力を十分に弁別できるのか

 もうひとつ、大きな問題があります。その問題を論じる前に、ここで現状の高校生の英語力がどの程度なのかを確認してみましょう。CEFRの「ものさし」にあてはめてみます。下の図です。

  

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 ご覧いただくとわかるとおり、これまでの日本のいわゆる「受験英語」が重視してきた「読む」「聞く」では7割前後が、4技能試験で新たに加わる「話す」「書く」については実に8割以上が、CEFR等級の一番下である【A1】になってしまうのですね。

 そして、いくら複数の民間資格・検定試験の中から選べると言っても、ケンブリッジ英検、TEAP/TEAP CBT、TOEFL iBTでは【A1】等級の熟達度は測ることは難しいことがわかります。

 統計学では、受験者間の特性の違いをどの程度正確に捉えることができるかを表す指標を「弁別力」と呼びます。ケンブリッジ英検、TEAP/TEAP CBT、TOEFL iBT のテストでは、テストを受ける集団の技能に対してテストが難しすぎるため、受験者間の英語力の能力差をとらえきれない。正確に測るには弁別力が低すぎるのです。

 

新学習指導要領よりも先にはじまる新テスト

 もちろん、そのような状況だからこそ、4技能英語力の向上に力点を置いた新学習指導要領に刷新するのではないか、と思われることでしょう。その通りです。しかしながら、悲しいかな、大学入試共通テスト(新テスト)に切り替わった後、大学入試共通テスト(新テスト)と民間資格・検定試験の併存期間である4年間に受験する生徒たちは、"現行の" 学習指導要領で学ぶ可能性の高い学年です。

 新学習指導要領への切り替えが一気に全面実施となる小学校や中学校とは異なり、高校では年次進行での実施となっているからです。これは、第1学年で新しい学習指導要領が実施されても、第2・3学年は前の学習指導要領のままであることを意味します。

 確実に、全員が、高校課程を新学習指導要領で学んだことになるのは、2024年度英語試験が民間資格・検定試験に一本化される年を待たなくてはなりません。

 

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まとめ

 以上、複数ある民間資格・検定試験の結果を、入学者選抜のような共通の土俵でどのようにして比較するのか、そして、その際の課題についてまとめてきました。実は、「大学入試英語成績提供システム」に参加の申込のあった各種民間資格・検定試験とCEFRとの対応関係や対照表については、現在、大学入試センターおよび文部科学省内で検討・調整中のフェイズとなっています。

 上記のような懸案事項は当然検討事項としてあがっているはずで、なんらかの納得性の高い対策が考えられているのではないかと想像します。大学入試センターから結果が公表される目途は2018年3月末。課題がどのようにクリアされたのか、はたまた残り続けるのか、引き続き追いかけてみたいと考えています。

 

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