教育改革2020

どうする・どうなる!?2020年。保護者視点で分析する教育改革。調べてわかったことを中心にまとめています。

【書評】小学校生活を犠牲にしない中学受験

 

 twiiterのタイムラインを眺めていたところ、今年度の某最難関中学の算数の入学試験で新パターン問題が出題されたとの話題を目にしました。同時に、受験生の対策負担が増えることを危惧されている教育関係者の声もあり、増え続ける中学受験生の演習量のことを思うと、胸にどんよりとしたものが広がるのを感じます。

 そして思い出したのが、つい最近手に取ったこちらの本でした。

 

■ 目次

 

『小学校生活を犠牲にしない中学受験』の概要 

 共働き家庭でありながら大手塾に通わせることなく、また、野球やバイオリンを直前期まで続けながら、第一志望であった難関国立中学に合格した親子のお話です。著者は「大手進学塾に行かない共働きの中学受験」のブログの中の人ですね。

 

親塾?いいえ違います

 大手塾に通わせずに中学受験に挑んだ話としては、ここ数年では『下剋上受験』が記憶に新しいです。TBSでドラマ化もされました。関連の算数問題集も書店で数多く見かけます。

 

 『下剋上受験』との最大の違いは、『下剋上受験』が親の指導だけで貫き通すスタイルだったのに対し、『小学校生活を犠牲にしない中学受験』は親の指導に軸足を置きながら、個別指導塾や家庭教師といった外部のリソースも上手に利用している、という点です。

 ご夫婦ともに外資系金融機関にお勤めとのこと、おそらくは仕事で培った情報収集やマネジメントの力をフルに活用して、中学受験と家庭のゆずれない価値観を両立するというプロジェクトに向き合った。その結果導き出された、合理的かつ高効率なスタイル、ということなのでしょう。

 

大手塾への通塾はデメリットも多い

 しかし、なぜ、あえて大手塾に通わなかったのか。小学校の授業内容だけでは到底太刀打ちできない問題が出題される中学受験では通塾が絶対正義の王道です。それでもなお、大手塾に通うことを回避した背景には、通塾のデメリットがメリットを上回る、と判断したからでした。

 通塾時間だけでもバカにならない。授業だけでなく多大な宿題によって睡眠時間が削られる。そして、ゴールデンエイジとも呼ばれる、あらゆる分野の能力が最高に伸びる時期なのに、他の習い事やスポーツを犠牲にしたくない…。多くのご家庭が気づきながらも目をつむっているこれらの事実に対して、真正面から向き合い、ひとつの道筋をつけた。非常にチャレンジングなプロジェクトだったと思います。

 

『小学校生活を犠牲にしない中学受験』の戦略はだれでも可能か

 では、誰しもが彼らご夫婦にならって後に続くべきか。この問いに対しては、残念ながらNOと言わざるをえません。

 先に述べたように、親御さんの熱意とプロマネ能力が非常に高い点、のみならず、直前期には家庭学習が確実に遂行されるように監督役として祖父の力まで借りていること、一人っ子で他のきょうだいへの気配り・目配りが必要ないこと、さらには、なにより、お子さん自身の基本能力が高かったこと等、あらゆる条件が整ってこそ成り立ちうる戦略だと僕には思えるからです。愚直にスタイルだけマネしたところで、デスマーチや撤退戦になることは目に見えています。

 (それでも、挑戦の価値はあることだとも思いますが)

 

共感ポイント

 最後に、いくつか共感したポイントをピックアップしたいと思います。

 

悔しさは自信と実績あってこそ

 本の中で以下のような主張がありました。

 悔しさをバネにするには、本人が自信や実績を持っていることが前提です。少年野球の強いチームはメンバーの人数も多いので、レギュラーになれるだけでも一つの実績です。(略)

 

 勉強も同じです。「ぼくはできるんだ」と思わせることが何よりも大事です。その上で少し調子に乗って自信過剰になったところで初めて、「悔しい思い」がプラスの効果を生むのです。

 わが家も子どもたちのおっとりとしたところを張り合いがなく思うことが多かったですが、まずは実績・自負を形成するところからだなと気づかされた一文でした。

 

 twitterでも紹介したところ、多くのいいね・RTがついたので、多くの親御さんにとって心当たりのあることだったことがうかがえます。

 

 

自己分析ノートの運用

 もうひとつ。テストの時間配分がうまくいかず苦労していたお子さんに、家庭教師の先生から指導があったという「自己分析ノート」。これがとても良いです。過去問や模試に取り組んだ後に必ず以下の4つのポイントについて子ども自身で書くよう指導していたそうです。

  1. 問題を解くにあたって意識して取り組んだこと
  2. できたこと
  3. できなかったこと
  4. 今後の課題

 メタな視点で自らの行動を振り返る力は自立的・自律的な学習者になるためには必須のスキルです。サッカーの中村俊輔選手も、高校時代の恩師に勧められて以来、ずっとサッカーノートをつけているそうです。日々、漫然と取り組むか、意識的に取り組むかで、年月を重ねると到達地点がずいぶん変わるものだと思います。

 最近はわが家の長男(中1)も模試に臨むにあたって気をつけるポイントをメモ用紙に書いていたりします。ぜひ継続し、習慣化していってほしいと願っています。

 

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