教育改革2020

どうする・どうなる!?2020年。保護者視点で分析する教育改革。調べてわかったことを中心にまとめています。

大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回化?【前編】

 

 今朝の衆院予算委員会で林芳正文部科学大臣の口から驚きのプランが飛び出しました。他の先進国にならって大学入学共通テスト(新テスト)を年複数回実施する検討をはじめるそうです。 

this.kiji.is

 もしこのプランが実現した場合、かなり広範囲にわたって影響が及ぶことが想定されます。今日はこの件に関して将来を占ってみたいと思います。

 

 

 

▪ 目次

 

 

大学入学共通テスト(新テスト)導入に関するこれまでの経緯と現在の評価

 2020年度(平成32年度)に現行の大学入試センター試験から切り替わることが決まっている大学入学共通テスト(新テスト)。現在は切替にむけて2017年度(同29年度)と2018年度(同30年度)に1回ずつ試行調査(プレテスト)をし、課題検証を行っています。

 2017年度試行調査(プレテスト)は、11月に国語・数学・社会・理科の各科目が実施され、英語は2018年2月に実施予定。参加高校約1900校、対象生徒は延べ約19万人、科目数11というかなり大規模なテストです。解答はマークシート方式が基本ですが、国語と数学には記述式問題も含まれました。「知識・技能」だけでなく、大学入学段階で求められる「思考力・判断力・表現力」を評価するのが今回の切り替えの目的のひとつだからです。

 昨年12月、英語をのぞく各科目の問題および正答率の速報が大学入試センターより公表されたのですが、これに対して先日、日本テスト学会が相当厳しめの意見表明を行いました。

 

 詳細は上記PDFにてご確認いただきたいのですが、この中で日本テスト学会は、記述式問題の採点の信頼性と実行可能性(フィージビリティー)に関して強い懸念を示しています。

 そもそも、今回の入試改革の方向性を定めた2014年12月の中教審答申において、理論的・技術的な側面からの実現可能性の検討・評価もなされないまま「多肢選択方式だけでなく記述式を導入」の方針が唐突に書き込まれたこと、また、議論を引き継いだ文科省の高大接続システム改革会議でも、テスト理論の専門家が再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正されることがないまま今に至っていることから、日本テスト学会は激おこなのです。

 日本テスト学会の主張をそのまま受け止めるならば、現行の年1回実施のプランであっても採点の信頼性と実行可能性(フィージビリティー)を担保するのは難しい、ということになります。まして、年複数回実施するなど、想定することすらおこがましいと考えているのではないでしょうか。推測ですが。

 

生徒の進路選択への影響は?

 上記のような経緯を経て、まさに今、議論と課題の洗い出しを行っている真最中の大学入学共通テスト(新テスト)。もし、文科相がぶちあげた年複数回実施が本当に実現した場合、これからの小中高生の進路選択にどのような影響が出るでしょうか。

 

①中高一貫校を狙う中学受験がますますヒートアップ

 まず真っ先に思い浮かぶのが、中学受験競争のより一層の激化です。

 大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回開催になったとすると、スケジュール的に高校3年生の夏には遅くとも1回目のテストが実施されることになるでしょう。現状、このタイミングで高校3年間分の履修を終え、余裕をもってテスト準備に時間をかけられるのは、カリキュラムの進度が速い中高一貫教育校だけです。高校募集枠のある国公立高校は卒業ギリギリまでかけて履修するスピード感なので、準備が後手にまわり圧倒的に不利になります。

 これを厭って、多少無理をしてでも中学受験で中高一貫校に進学しようと考えるご家庭が増え、結果的に「お勉強」の早期化・中学受験の過熱化が進むでしょう。

 

②私立学校の高校募集枠減少 

 近年、首都圏私立中高一貫校の高校募集停止の流れが続いています。

 高校受験界に大激震をもたらした2011年の海城学園に続き、2012年攻玉社、2014年高輪、2017年東邦大東邦と、高校受験生にも門戸を開いていた上位校が次々と完全中高一貫化しています。

 中学入学組と高校入学組のカリキュラムを一本化できると、卒業までのカリキュラムに無駄をなくすことができ、資源の有効活用が可能になることが大きな理由だと言われています。要するに、高校入学組と中学入学組の進度を合わせる労力を省きたい、ということでしょう。

 もし、大学入学共通テスト(新テスト)が年複数回実施となり、さらにカリキュラムの前倒しを迫られるとなったら。現在残っている有力校も次々と高校募集枠停止の判断を下すのではないでしょうか

 具体的には、桐朋、巣鴨、城北、本郷、女子高だと豊島岡、あたりは可能性が高いのではないかと勝手に想像しています。開成については、柳沢校長自ら「(高校募集を)やめるつもりはまったくない」と断言していますが…これだけ状況が変わるとどうでしょう、もしかすると方針転換があるかもしれません。

 

③大学付属校人気にさらなる拍車

 大学入試改革の先行き不透明さから大学付属校人気か高まっていることはかねてからお伝えしてきました。実際、2018年小学校入試・中学入試での出願数を昨年のものと比較すると、たしかにいずれの学校も出願数を伸ばしている傾向が見て取れます。

 今回の大臣発言の報道を受け、こうしたトレンドは来年以降も続いていくものと考えます。

 

いったんのまとめと次回予告

 以上、大学入学共通テスト(新テスト)の年複数回実施が本当に実現した際の、生徒の進路選択への影響を中心に予測を立ててみました。次回、後編では「高校生の生活はどのような影響を受けるのか」について、未来予測をしてみたいと思います。

 

 

あわせて読みたい